不均一触媒反応のオペランド分光


 不均一触媒表面で起こる反応を原子、分子レベルで理解するためには、表面あるいは界面に敏感な分光手法を駆使して研究を行うことが必須です。 動作中の触媒表面を分光測定することによって、触媒反応過程に関する直接的な情報を得ることができます。このような実験手法は「オペランド分光法」と呼ばれ近年盛んに研究されており、動作環境下で活きた触媒表面を観ることの重要性が次第に明らかになってきています。

 我々は、良く規定された実験条件で研究を行える超高真空技術とオペランド分光手法を組み合わせることにより、複数のプロセス(分子吸着、拡散、表面構造変化および物質移動、反応、生成物の脱離など)が絡む複雑な不均一触媒反応過程を微視的に理解することを目指しています。雰囲気制御型準大気圧光電子分光法や偏光変調オペランド赤外反射吸収分光法といった異なる特徴を持つ手法を駆使して、動作中の触媒表面状態および触媒反応機構の実験的解明を目標に研究を行っています。

 特に、二酸化炭素やメタンといった反応性が低い分子をメタノールなどの産業的に有用な分子に転換する触媒反応に焦点を当てて、高機能触媒開発に貢献しうるような実験的知見を得ることを目指しています。そのためにモデル触媒を用いたオペランド分光研究を通して表面反応機構に関する基礎学理を構築するとともに、触媒開発を行っている研究者との共同研究によって、実触媒のその場観測による触媒機能の発現機構の解明も行っています。  



図1:オペランド分光測定により明らかになった銅-亜鉛合金表面における二酸化炭素の反応過程[1].

参考文献



1. "Operando Characterization of Copper-Zinc-Alumina Catalyst for Methanol Synthesis from Carbon Dioxide and Hydrogen by Ambient-Pressure Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy" T. Koitaya et al., J. Phys. Chem. C, 127, 13044-13054 (2023).

2. "CO2 Activation and Reaction on Zn-Deposited Cu Surfaces Studied by Ambient-Pressure X-ray Photoelectron Spectroscopy", T. Koitaya et al., ACS Catal. 9, 4539 (2019).

3. "Surface Chemistry of Carbon Dioxide on Copper Model Catalysts Studied by Ambient-Pressure X-ray Photoelectron Spectroscopy", T. Koitaya et al., e-J. Surf. Sci. Nanotechnol. 17, 169 (2019).

Topページ